チュベローズは、収穫した瞬間から香りが変化し始める。南フランスのグラースで六月に摘まれたばかりの花は、72時間以内に蒸留しなければ、その青みがかった緑の印象が失われる。Mystica Amber Glenがグラースの契約農家から直接仕入れる理由は、この時間の問題に尽きる。
チュベローズとはどんな素材か ¶
チュベローズ(Polianthes tuberosa)は、メキシコ原産の球根植物で、フランスのグラースには17世紀に持ち込まれた。花は夜に最も強く香り、摘み取った後も数時間は香りを放ち続ける。この「死後の香り」とも呼ばれる性質が、アブソリュート抽出を難しくする。溶剤抽出(アンフルラージュの現代版)が今も使われるのは、蒸気蒸留では熱によって香りの分子が壊れるためだ。
収穫から蒸留までの時間 ¶
Domaine Ferreroでは、チュベローズを夜明け前の4時から6時の間に手摘みする。この時間帯が最も花の精油含有量が高い。摘み取った花は冷蔵コンテナでパリのアトリエに輸送され、到着後すぐに溶剤抽出を開始する。今年は収穫から68時間後に蒸留を完了した。この数字が70時間を超えると、花の芯にある青みがかった印象が薄れ、甘さだけが残る傾向がある。
アブソリュートとエッセンシャルオイルの違い ¶
エッセンシャルオイルは水蒸気蒸留で得られる。アブソリュートは溶剤(ヘキサンなど)で花の成分を抽出し、その後アルコールで精製する。チュベローズのアブソリュートは、エッセンシャルオイルより分子量の大きい成分を含むため、肌の上での持続性が高く、乾燥後に別の顔を見せる。Tubéreuse Blancheがつけた直後と二時間後で異なる印象を持つのは、この性質による。
グラース産と他産地の違い ¶
インド産やエジプト産のチュベローズ・アブソリュートも市場に出回っているが、グラース産は土壌と気候の影響で、花の密度と香りの複雑さが異なる。グラースの石灰質土壌と地中海性気候が、花に独特のミネラル感を与える。価格はインド産の三倍以上になるが、Mystica Amber Glenではグラース産以外を使ったことがない。
調香師として素材に向き合うこと ¶
素材の品質は、調香の技術より先にある。どれだけ構造を工夫しても、素材が平凡であれば香りは平凡になる。Célesteが毎年六月にグラースの農家と直接連絡を取り、収穫のタイミングを確認するのは、この理由からだ。素材を選ぶことが、すでに調香の始まりだと思っている。
チュベローズのアブソリュートを使ったTubéreuse Blancheは、現行コレクションの中で最も素材の純度を前面に出した一本です。現行コレクション七種のサンプルセットで、ぜひ実際に嗅いでみてください。